タンブラーの知識

タンブラーを冷凍庫に入れるのはNG?

タンブラーを冷凍庫に入れるのはNG?

ソトマグ

うだるような暑い日や、お風呂上がりの至福のひとときに「飲み物をキンキンに冷やしたい!」そう思って、いつも使っているタンブラーをそのまま冷凍庫に入れるのは大丈夫かな…?と疑問に思ったこと、ありませんか?

私もお気に入りのタンブラーをいくつか持っていて、特にサーモスやスタンレーのような高性能な真空断熱タイプを使っていると、「これを冷凍庫であらかじめ冷やしておいたら、もっと保冷効果が上がるんじゃないか…」なんて、ついつい考えてしまいがちですよね。すごく分かります。

あるいは、ステンレス製ではなくて安価なプラスチック製のタンブラーならどうなのか、もし飲み物を入れたまま凍らせてしまったら、やっぱり割れるのではないか、と具体的な心配をしている方もいるかもしれません。

この「タンブラーを冷凍庫に入れる」という、一見すると効果がありそうな行為、実は保有しているタンブラーの種類によって「絶対にダメ」な場合と、「むしろ推奨」される場合に、結論が真っ二つに分かれるんです。

何も知らずに間違った使い方をして、奮発して買ったお気に入りのタンブラーの「命」とも言える保冷機能が失われてしまったら…本当に悲しいですよね。

この記事では、なぜ真空断熱タンブラーを冷凍庫に入れてはいけないのか、その工学的な理由から、タンブラーを安全に使うための正しい冷やす方法、そして「冷凍庫に入れること」を前提に設計された特別なタンブラーの情報まで、私の経験も踏まえながら詳しくまとめてみました。

ポイント

  • タンブラーを冷凍庫に入れるとなぜ危険なのか
  • 真空断熱タンブラーが致命的に壊れるメカニズム
  • メーカー各社が推奨するとても簡単な冷却方法
  • 冷凍庫に入れることを前提とした「冷却」タンブラーとは

タンブラーを冷凍庫に入れると危険?

まず、この記事で一番お伝えしたい結論から言いますね。

もしお持ちのタンブラーが「真空断熱タイプ」なら、冷凍庫に入れるのは基本的に「厳禁」です。

絶対にやめてください。

YETI(イエティ)やサーモス、スタンレー、象印、タイガーといった有名ブランドの高性能タンブラーは、そのほとんどがこの「真空断熱タイプ」に該当します。

なぜそこまで強く「ダメ」と言うのか、その恐ろしい理由を詳しく見ていきましょう。

真空断熱タイプが壊れる理由

真空断熱タイプが壊れる理由

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真空断熱タンブラーの驚異的な保冷・保温性能は、本体の内壁と外壁の間に存在する「真空層」のおかげです。

中学校の理科で習ったかもしれませんが、熱は「伝導」「対流」「放射」で伝わりますが、そのうち「伝導」と「対流」は熱を運ぶための空気(分子)が必要です。

真空層は、この空気(分子)を極限までなくすことで、熱の移動をブロックする「魔法の壁」の役割を果たしているわけですね。

ただ、この構造は私たちが思う以上に、とてもデリケートなんです。

サーマルストレス(熱応力)による歪み

タンブラーを家庭用冷凍庫(平均で約-18℃)に入れると、ステンレスの本体は「熱収縮」によって縮もうとします。ここまでは問題ありません。

問題は、タンブラーが「内壁」「外壁」「それらを繋ぐ溶接部」「真空層を密閉している底の“封止部(ふうじぶ)”」といった、複数の部品で構成されていることです。

急激に冷やされると、これらの部品、特に構造的に弱い「封止部」や溶接部に、不均一な力(=サーマルストレス・熱応力)がかかります。

常温と冷凍庫を何度も行き来させると、金属疲労が蓄積し、やがて目には見えない微細なクラック(亀裂)や歪みが生じる可能性があります。

真空層の不可逆的な破壊(=真空抜け)

その微細なクラックから空気が真空層に「シュー…」と侵入してしまったら、もう終わりです。

それはもう真空ではありません。「真空が抜けた」状態です。

こうなると断熱性能は完全にゼロ。

ただの「二重構造になっている、ちょっと重いステンレスカップ」になってしまいます。

そして、この破損は物理的な破壊なので、修理することは不可能です。

お気に入りのタンブラーが、こんな状態になってしまったら悲しいですよね。

  • 冷たい飲み物を入れると、外側がすぐに冷たくなり、大量の「汗」(結露)をかくようになる。
  • 熱い飲み物を入れると、外側が熱くなり、熱くて持てなくなる(以前は持てたのに)。
  • あれだけ保冷できていた氷が、普通のコップと同じか、それより早いくらいに溶けるようになる。

もし、お手持ちのタンブラーにこんな症状が出たら、残念ながら真空層が破損してしまったサインかもしれません…。

高価なタンブラーも多いですし、たった一回の「試してみよう」という好奇心で、製品の寿命を永久に失ってしまうのは、あまりにも悲しい結末ですよね。

飲み物を入れたまま凍らせると割れる

これは、前述の「真空層の破壊」とはまた別の、より直接的で分かりやすい危険行為です。

タンブラーの種類(真空断熱か、プラスチックか、ガラスか)に関わらず、液体、特に水やお茶、ジュースなどを入れたまま凍らせることは、絶対にやってはいけません。

これも理科の授業のおさらいになりますが、水はとても特殊な物質で、液体から固体(氷)になるときに、その体積が約9%も増える(膨張する)性質を持っています。(出典:サントリー『氷・水・水蒸気・・・水の三態』」

たった9%かと思うかもしれませんが、密閉された容器の中で体積が9%増えるというのは、とんでもない膨張圧を生み出します。

逃げ場を失った氷は、内側からタンブラー全体を強大な力で押し広げようとします。

膨張圧による物理的破損のリスク

これは、冷凍庫に入れっぱなしにした缶ビールやペットボトルが破裂する現象とまったく同じ原理です。

  • ステンレス製 : 頑丈そうに見えますが、内壁が外側にボコッと膨らんで変形したり、溶接部がメリメリと破断する可能性があります。フタを締めていれば、フタが弾け飛んだり、ネジ山が破壊されたりします。
  • プラスチック製 : 本体にピシッと亀裂が入ったり、パキッと音を立てて割れてしまう可能性が非常に高いです。
  • ガラス製 : ほぼ確実に破裂・破損します。ガラス片が冷凍庫内に飛び散る可能性もあり、非常に危険です。

「ちょっと冷やすだけ」のつもりが、取り返しのつかない破損に繋がるので、飲み物を入れたままの冷凍は絶対にやめましょう。

サーモスや象印の公式見解

では、主要なメーカーは、この「冷凍庫に入れる」行為について、公式にどう言っているのでしょうか。

各社の取扱説明書やFAQを調べてみると、その姿勢は明確です。

  • サーモス(THERMOS): 特定製品の取扱説明書において、「ご使用後は、すぐに水などをかけて急冷しないでください」と記載されています。これは熱湯消毒後の話など、冷凍庫とは逆のシチュエーションですが、製品に「急激な温度変化(熱衝撃)」を与えること自体を避けるべき、というメーカーの設計思想が読み取れますね。
  • 象印(Zojirushi): 象印の公式FAQでは、ステンレスタンブラーの保冷効果を高めるコツとして、冷凍庫に入れることには一切言及していません。その代わり、「あらかじめ、少量の氷水で本体内側を予冷しておく」ことを明確に推奨しています。これは、冷凍庫使用を非推奨とし、安全な代替策(予冷)を提示している明確な証拠と言えます。
  • YETI(イエティ): 海外のユーザーフォーラムなどでは、製品付属のケアパンフレットに「タンブラーを凍らせてはいけない(Do not freeze)」という警告がハッキリと記載されていることが報告されています。その理由として「真空に問題が起きるかもしれない」と言及されており、メーカーが真空層の破損リスクを認識していることが示されています。

メーカー保証の対象外になる可能性大

これらの主要メーカーの姿勢から、真空断熱タンブラーを冷凍庫に入れる行為は、製品が想定している正しい使用方法から完全に逸脱しています。

万が一、冷凍庫に入れたことが原因で真空が抜けたり、変形したりした場合、メーカー保証の対象外となる可能性が極めて高いと考えるべきです。自己責任での危険な行為となってしまいますね。

スタンレーで探すのは専用製氷皿?

スタンレーで探すのは専用製氷皿?

ソトマグ

「スタンレー タンブラー 冷凍庫」といったキーワードで検索すると、ちょっと面白い、特徴的な検索結果が出てくることがあります。

検索結果の上位に出てくる情報の多くが、タンブラー本体を冷やす話ではなく、「スタンレーのタンブラー(特に北米で人気の40オンスサイズなど)に、ピッタリ入る形状の氷を作るための専用製氷皿(アイストレー)」に関する製品情報なんです。

これって、とても重要な示唆かなと思います。

つまり、このキーワードで検索している人の多くは、「スタンレーのタンブラー本体を冷凍庫に入れたい」と本気で思っているわけではなく、「スタンレーのタンブラーで、飲み物を(大きな氷を使って)キンキンに冷やしたい」という、真の目的を持っている可能性が高いということです。

その目的を達成する手段として、「タンブラー」と「冷凍庫」という安直な単語を組み合わせて検索した結果、意図せず「タンブラー本体の冷凍」という危険な行為の是非にたどり着いてしまっている…そんな構図が見えてきます。

検索意図のズレと正しい答え

もし、あなたが「スタンレーを冷やしたい」と思って検索したなら、本当に探しているのは「タンブラー本体の冷凍」ではなく、「スタンレーのタンブラーに最適な、大きくて溶けにくい氷」ではありませんか?

スタンレーのカップに最適化された、中空のシリンダー型や大きな角氷を作るための専用製氷皿が、今たくさん販売されています。

本体を危険に晒すのではなく、最適な「氷」を探すこと。

それが、この検索キーワードに対する、最も安全で価値のある「答え」なのかもしれませんね。

結露によるステンレスの錆リスク

「もし真空層が壊れなかったとしても、短時間なら…」と思うかもしれませんが、実はもう一つ、地味ですが非常に厄介な副次的リスクがあります。それが「錆(サビ)」です。

「えっ、ステンレスって錆びないんじゃないの?」と思いますよね。私もそう思っていました。

でも、工学的には「非常に錆びにくい」金属であって、「絶対に錆びない」わけではないんです。

ステンレスの耐食性は、表面に形成されている「不動態皮膜」という、クロムを主成分とした非常に薄いバリア(酸化膜)によって守られています。

では、冷凍庫から出したタンブラーを室温に置くと、どうなるでしょう?

そう、空気中の水分が急激に冷やされ、タンブラーの表面にびっしりと、大量の「結露水」が発生します。

(真空が抜けていなくても、外側が-18℃になっていれば当然結露します)

電気化学腐食の発生

この結露水が、タンブラー表面の以下のようなものと接触すると、問題が起こります。

  • 洗浄で落としきれなかった塩分(人間の汗や手の脂、飲料の残り)
  • 水道水に含まれる塩素イオン
  • 他の金属(鉄のサビなど。いわゆる「もらい錆び」)

水と塩分(電解質)、異種金属が揃うと、そこに「微小な電池」が形成され、電気化学腐食と呼ばれる現象が発生します。

これにより不動態皮膜が局所的に破壊され、その下の鉄が酸化し、「錆」として赤茶色く現れてしまいます。

特に、水分や汚れが溜まりやすい「溶接部」「フタのパッキンの隙間」「ロゴのエッチング(彫刻)部分」などは、腐食の起点となりやすい危険な箇所です。

真空層の破壊リスクだけでなく、結露という副産物を通じてステンレス鋼の耐食性をも脅かす行為。それが冷凍庫での冷却なんですね。

タンブラーを冷凍庫に入れる目的と代替案

タンブラーを冷凍庫に入れる目的と代替案

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ここまで「真空断熱タンブラーを冷凍庫に入れるのは危険だらけ」という、ちょっと怖い話をしてきました。

でも、私たちが本当にやりたかったのは、タンブラーを壊すことではなく、「飲み物を冷たく保ちたい、あるいは急速に冷やしたい」ことだったはずです。

その目的を、お気に入りのタンブラーを傷つけることなく安全に達成するための「正しい方法」や、そもそも「冷凍庫に入れること」を前提に作られた「別の選択肢」について、ここから詳しくご紹介していきます。

正しい冷やす方法:氷水での予冷

真空断熱タンブラーの性能を100%、いや120%引き出すために、メーカー(前述の象印など)も公式に推奨している、最も安全かつ効果的な方法があります。それが「予冷(よれい)」です。

「よれい」という言葉、聞き慣れないかもしれませんが、やり方は拍子抜けするほど簡単です。

メーカー推奨!「予冷」の簡単ステップ

  1. 飲みたい飲み物を注ぐ、その数分前に、タンブラーに少量の氷と水(つまり氷水)を入れます。
  2. 1分程度、そのまま放置するか、マドラーなどでクルクルとかき混ぜて、タンブラーの内壁自体をキンキンに冷やします。
  3. 時間になったら、その「予冷」に使った氷水を捨てます。(この氷水は捨てる用です)
  4. そして、内壁が冷え切ったタンブラーに、本番の冷たい飲み物と新しい氷を注ぎます。

たったこれだけです。

予冷が効果絶大な工学的理由

なぜこれだけで効果が劇的に変わるのか。それにはちゃんとした理由があります。

例えば、室温25℃のタンブラーに、冷蔵庫から出したての4℃の飲み物をそのまま注ぐとします。

このとき、飲み物が持っていた「冷熱エネルギー」の一部は、まず「タンブラーの内壁(25℃のステンレス)を冷やす」という仕事のために奪われてしまいます。

つまり、飲み物自体が少しぬるくなってしまうんですね。

予冷は、この最初の「タンブラーを冷やす仕事」を、(どうせ捨てる用の)氷水に肩代わりさせておくテクニックなんです。

あらかじめ0℃の氷水で内壁を冷やし切っておけば、いざ4℃の飲み物を注いだとき、飲み物の冷熱エネルギーがタンブラーに奪われることなく、その冷たさを長時間キープすることだけに集中できます。

冷蔵庫での冷却より「予冷」が上

「じゃあ、冷凍庫がダメなら冷蔵庫(約4℃)でタンブラー本体を冷やしておくのは?」と思うかもしれません。

これは冷凍庫に入れるよりは遥かに安全です。サーマルストレスもほとんどかからないでしょう。

ただ、合理的に考えると、冷蔵庫で4℃に冷やしたタンブラーに4℃の飲み物を注ぐより、0℃の氷水で予冷したタンブラーに4℃の飲み物を注ぐほうが、温度差の観点から、より保冷効果が持続するのは明らかですよね。

メーカーが冷蔵庫冷却を推奨せず、あえて「予冷」を推奨するのは、これが最も合理的かつ効果的だからなんです。

騙されたと思って、ぜひ一度試してみてください。氷の溶けるスピードが全然違いますよ。

プラスチック製は耐冷温度を確認

プラスチック製は耐冷温度を確認

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では、話を変えて、真空断熱ではない、安価な一層構造のプラスチック製タンブラーならどうでしょうか。

この場合、真空層の心配はありませんが、代わりに注意すべきは素材の「脆化(ぜいか)」です。

多くの一般的なプラスチック(ポリプロピレンやポリスチレンなど)は、冷凍庫のような低温に長時間さらされると、本来のしなやかさや弾力性を失い、硬く脆くなる性質があります。

つまり、常温なら平気な、テーブルに「コン」と置く程度のちょっとした衝撃でも、パキッと割れたり、ヒビが入ったりする可能性が高まります。

「耐冷温度」の表示を確認しよう

安全に使えるかどうかは、製品の底面やパッケージに記載されている「品質表示」で確認できます。

そこに「耐冷温度 -20℃」などと書かれていれば、家庭用冷凍庫(約-18℃)の環境でも耐えられるように設計されています。

もし耐冷温度が「0℃」や「-10℃」だったり、何も書かれていなかったりする場合は、冷凍庫に入れるのはやめて、冷蔵庫で冷やす程度に留めておくのが無難です。

ただ、最近は「トライタン(Tritan)」という高機能なプラスチック(コポリエステル樹脂)を使った製品も増えています。

トライタンはガラスのような透明度と高い耐久性を持ち、耐冷温度も-20℃程度あることが多いので、冷凍庫での使用(本体のみ)に耐えられる製品もあります。

いずれにせよ、素材の特性を理解し、表示を確認することが大切ですね。

もちろん、どの素材であっても「飲み物を入れたまま凍らせる」のは膨張圧で破損するのでNGですよ。

保冷剤内蔵タンブラーとは?

さて、ここからは「冷凍庫NG」の話から一転して、むしろ「冷凍庫推奨」のタンブラーの話です。

実は、世の中には「タンブラーを冷凍庫に入れたい」という私たちの最初のニーズに、真正面から応えてくれた製品群が存在します。

それが、「保冷剤(冷却ジェル)内蔵タンブラー」と呼ばれるものです。

これは、サーモスなどの真空断熱タンブラーとは、設計思想がまったく異なります。技術的に分類すると、以下のようになります。

  • 真空断熱タンブラー(パッシブ技術) → 技術のタイプ:受動的(パッシブ) → 目的:外部からの熱の侵入を防ぎ、今ある温度を「キープする」(保温・保冷)。 → 能力:ぬるい飲み物を冷たくする能力は無い
  • 保冷剤内蔵タンブラー(アクティブ技術) → 技術のタイプ:能動的(アクティブ) → 目的:冷凍庫で蓄積した冷気を放出し、飲み物の熱を奪って「冷却する」。 → 能力:ぬるい飲み物を氷点下まで冷やせる

私たちが求めていたのが「キープ」ではなく「冷却」だった場合、選ぶべきは後者の「アクティブ技術」のタンブラーだった、ということになりますね。

ON℃ZONEなど冷凍専用タイプ

ON℃ZONEなど冷凍専用タイプ

出典:ON℃ZONE公式

この「保冷剤内蔵(アクティブ冷却)」タンブラーの代表的な製品が、株式会社ドウシシャが展開する「ON℃ZONE(オンドゾーン)」シリーズです。

これらの製品は、タンブラーの壁の内部(二重構造の間)に、「蓄冷材(冷却ジェル)」が文字通り封入されています。

使い方は、私たちが最初に(危険と知らずに)やろうとしていたこと、そのものです。

冷凍対応タンブラーの正しい使い方

  1. 使用前に、タンブラー本体を(飲み口が凍らないよう)逆さまにして冷凍庫に入れます。
  2. 製品によりますが、12時間以上かけて、内部の蓄冷材をカチカチに凍らせます。
  3. しっかり凍った本体を取り出し、そこに冷やしておいた飲み物(ビールやジュースなど)を注ぎます。
  4. すると、内壁を介して蓄冷材が飲み物の熱を急速に奪い、わずか1分程度で氷点下に到達させる…という仕組みです。

ON℃ZONEの「3層構造」の秘密

特に面白いのが、ON℃ZONEの上位モデル(「フリージングジョッキ」など)に採用されている「独自開発3層構造」です。

これは、内側から「ステンレスの内壁」→「第1層:蓄冷材層」→「第2層:真空断熱層」→「ステンレスの外壁」という、非常に洗練された構造になっています。

この構造における「真空断熱層」の役割は、サーモスとは異なります。

  • 主目的:外気(室温)の熱が、内部の「蓄冷材」を溶かすのを防ぎ、冷気を長持ちさせるため。
  • 副目的:内部の蓄冷材(-18℃)の冷たさが外壁に伝わり、冷たすぎて持てない、という問題を解決するため。(結露防止にもなります)

まさに、真空断熱技術と蓄冷技術の「いいとこ取り」をしたハイブリッドな製品と言えますね。

他にも、「IceQuick Neo(アイスクイックネオ)」のように「マイナス18℃でも凍らない特殊冷却ジェル」を使っていることを謳う製品や、昔からある二重構造のプラスチック製ビアジョッキの間に保冷液が入っているタイプなども、この「アクティブ冷却」の仲間に分類されます。

保冷と冷却【目的別の正しい使い方】

ここまで見てきたように、「タンブラー」と一口に言っても、その中身(技術)はまったく別物だった、ということがお分かりいただけたかと思います。

自分が持っているタンブラーがどちらのタイプなのか、あるいは自分がタンブラーに「キープ」と「冷却」のどちらの目的を求めているのか。

それを理解することが、製品を壊さず、満足度を上げるために最も重要ですね。

ここで、両者の違いをテーブル(表)にまとめておさらいしておきましょう。

比較項目 真空断熱タンブラー 保冷剤内蔵タンブラー
代表製品 サーモス, スタンレー, 象印, YETI 等 ON℃ZONE, IceQuick Neo, 冷凍ジョッキ 等
技術 パッシブ(受動的):真空層 アクティブ(能動的):蓄冷材(ジェル)
主目的 今ある温度をキープする(保温・保冷) 飲み物自体の温度を冷却する(冷やす)
冷凍庫の使用 厳禁(不可) 必須(使用の前提)
主なリスク 真空層の破損(機能喪失)、錆 (設計通りのため特になし)※
推奨する冷却法 氷水による予冷 本体を冷凍(12時間以上など)

(※表は横にスクロールできます) ※保冷剤内蔵タイプも、飲み物を入れたまま凍らせると膨張圧で破損するリスクは共通です。

タンブラーを冷凍庫に入れる結論

それでは、この記事の総まとめです。

「タンブラーを冷凍庫に入れる」という疑問に対する、最終的な結論(あなたのとるべき行動)を、目的別に明確に提示します。

ご自身のニーズが「A」と「B」のどちらに近いか、チェックしてみてください。

A. あなたの目的が「今ある冷たい飲み物の冷たさを、できるだけ長時間キープしたい」場合

→ あなたが選ぶべきは「真空断熱タンブラー」(サーモス, スタンレー, 象印など)です。

→ そして、そのタンブラー本体は、絶対に冷凍庫に入れないでください。(真空層が破壊され、機能が失われます)

→ 代わりに、飲み物を注ぐ直前に「氷水での予冷」を行ってください。これが、真空断熱タンブラーの性能を最大限に引き出す、唯一の正しい方法です。

B. あなたの目的が「ぬるい飲み物や、冷えている飲み物を、さらに氷点下までキンキンに冷やしたい」場合

→ あなたが選ぶべきは「保冷剤内蔵タンブラー」(ON℃ZONE, 冷凍ジョッキなど)です。

→ このタイプの製品は、性能を発揮するために、使用前に必ず冷凍庫で12時間以上凍らせる必要があります。

→ これは「真空断熱」とは異なる「アクティブ冷却」という技術を用いた、まったく別のカテゴリの製品だと理解してください。

「タンブラーを冷凍庫に入れたい」と漠然と思ったときは、まずご自身のタンブラーがA/Bのどちらのタイプか、そしてご自身の真の目的がA/Bのどちらなのかを、しっかり確認してみてください。

お気に入りのタンブラーをうっかり壊してしまわないよう、それぞれの素晴らしい特性に合った正しい使い方で、これからの季節、冷たいドリンクを最高に楽しんでいきましょう!

免責事項

この記事は、一般に公開されている製品情報や工学原理に基づき、私M個人の見解や経験をまとめたものです。

特定の製品の仕様、保証、および具体的な取り扱いについては、必ず製品に付属している取扱説明書を最優先でご確認いただくか、製造元のカスタマーサポートに直接お問い合わせください。

本記事の情報を元にした結果、万が一、製品の破損や事故等が発生した場合においても、当サイト(ソトマグ)では一切の責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。

最終的なご判断は、ご自身の責任においてお願いいたします。

執筆者M
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最後までお読みいただきありがとうございました!

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